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磁器散策 − 伊万里・有田焼の今昔 −

2022年5月18日(水)
 掲載の作品は轆轤造りの生地に手を加え暖かみのある風合いに仕上げました。
 また、蟻を描いたところお客様から二度見され、「リアル」との高評価をいただきました。
 これからも伝統を繋ぎ時代に合わせたもの作りをしてまいります。
 掲載文を抜粋しましたので、どうぞご覧ください。



 時代に合わせて進化
 伊万里・有田焼の今昔
日本で初めて作られた磁器である伊万里・有田焼。その歴史と技術について加飾部門(下絵付・上絵付)・成形部門(ろくろ)の伝統工芸士である鍋島藩窯の市川光山さんにお話しいただきました。


 伊万里・有田焼は、佐賀県の伊万里市と有田町を中心に約400年前から作られている日本最古の磁器です。江戸時代中期には、この地域を治めていた佐賀鍋島藩によって伊万里・有田焼のなかでも献上品として作られている「鍋島焼」が誕生しました。
 鍋島焼は当時、世界一といわれた中国の焼きものをめざして、豪華に作られました。その最たる例が「青磁」という焼き物です。青磁は青みを帯びた釉薬を使用するのが特徴で、その色が中国の皇帝が使用した宝石の器「玉」に似ていたため高値で取引されました。佐賀鍋島藩は資金や技術を注ぎ込み、陶工に青磁を作らせました。
 また、献上する天皇や将軍、大名は民衆から神さまのようにあがめられていたため、作者の意図が入らないように均一の線「屈鉄線」で絵柄を描いていました。さらに釉薬を塗る前に絵を描く「下絵付」に使われる絵具が武士にとって縁起のよい色である「勝紺(かちこん)」であることから献上先に大変重宝されました。加えて、下絵付のあとに一度窯で焼き、その上から赤・緑・黄色などの絵具で絵を描く「上絵付」を行った作品も華やかで人気でした。現在はこのような伝統の技法だけでなく、新しい技法を取り入れている作家もいます。
 私が伝統工芸士として大切していることは、木の年輪のように伝統的工芸品の歴史を積み重ねることです。時代に合わせて新しい技法も挑戦しつつ、基礎となる技術すべてを研究し、精通することが大事だと感じています。昔は戦に勝つ、という縁起を担いでよく描かれた虫のデザインも、時代に合わせて新たな意図を吹き込んだ作品にアレンジして残していきたいです。

上左1:カラフルな「鍋島焼」のティーカップ
上左2:下絵付のみで描かれる鍋島焼「染付鍋島」の皿
上右:市川光山さん
 1983年から佐賀県重要無形文化財陶芸白磁の保持者である中村清六に師事。
 1993年に第十九代市川光山を継承。1996年に下絵付、2001年にろくろ成形、
 2002年に上絵付の部門で伝統工芸士に認定。
下左:市川さんによる絵付の実演の様子。細い屈鉄線を何本も引き、お椀に絵柄を描いていきます。
下右:市川さんの作品に描かれたアリは、働き者で道に迷わないことなどにあやかったとのこと。


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